- セイヨウミザクラ(サクランボ、カンカオウトウ《甘果桜桃》) Cerasus avium (異名:Prunus avium)
- 一般名:Sweet Cherry, 欧州桜桃(中国)
- いわゆるサクランボとよばれるものはほとんどが本種または本種の栽培品種。果実は長い柄をもち、比較的小さい。またモモ、スモモ、ウメのような縦方向の溝がない。西アジア原産。高さ15~20mになる落葉高木。アジア西部からヨーロッパ南東部、北アフリカにかけて分布。ヨーロッパ、アメリカなどで栽培され、日本には明治初年に導入された。日本での主産地は山形県。有名な「佐藤錦(さとうにしき)」は山形県で育成された品種。スモモ属(Prunus)に分類されることもある。
- マメザクラ(フジザクラ) Cerasus incisa var. incisa
- 花や葉が小型なのでマメザクラとよばれる。高さ3~7m。富士、箱根地方に多いため、フジザクラまたはハコネザクラともよばれる。開花はソメイヨシノよりもやや早めで、葉の展開より前またはほぼ同時に、淡紅色をおびた白色で、やや下向きの花をつける。萼筒は長さ5~6mmの筒形。庭木や盆栽にもよく利用される。
- ▲マメザクラ参考写真:服部緑地都市緑化植物園 2015年3月
- ヤマザクラ Cerasus jamasakura (Syn. Prunus jamasakura)
- 一般名:Hill Cherry
- 日本のほぼ南半分と朝鮮半島の南部に分布する落葉高木。開花時期はソメイヨシノよりも遅い。葉の展開とほぼ同時に開花するため、ソメイヨシノのような華やかさはないが、若葉と花の色の取り合わせが美しく、味わい深い。ソメイヨシノが普及する以前は花見といえばこの桜だった。奈良県の吉野山のサクラも、ほとんどがこの種。戦後全国各地に植栽されたソメイヨシノが寿命を迎える時期にあたっていることもあり、最近はヤマザクラなど他の桜に植え替える動きがひろがっている。材は建築材や家具材、また浮世絵の版木などに用いられる。
- カワヅザクラ(河津桜) Cerasus lannesiana cv. Kawazu-zakura
- カンヒザクラ(寒緋桜)とオオシマザクラ(大島桜)の自然交配によって生じたと推定される早咲き桜の品種。原木が静岡県賀茂郡河津町にあることから「河津桜」と命名された。2月上旬から約1か月間、直径約3cmの淡紅色の花をつける。樹皮は紫褐色。
- 河津町で毎年2月10日~3月10日の期間に開催される「河津桜まつり」には、多くの観光客が訪れる。
- 切手(1)の鳥はメジロ(Zosterops japonica)。
- ソメイヨシノ Cerasus yedoensis
- 春、葉が出る前に薄紅白色の花を枝いっぱいにつける。幕末に江戸染井村(現在の東京都豊島区駒込)の植木屋から売り出され、明治期に東京に広まった。はじめヨシノザクラといわれていたが、吉野のヤマザクラと混同するので、明治5年(1872年)に藤野寄命によってソメイヨシノの名が付けられた。学名命名の原木は東京文京区の小石川植物園に残っている。ソメイヨシノがオオシマザクラとエドヒガンとの雑種であることを示唆したのは、アメリカのウィルソンで、戦後竹中要博士らによって実験で確かめられた。花付きが豪華であることと成長の速さから、またたくまに日本中に広まったが、樹の寿命は短い。しかも日本中のソメイヨシノは、すべてクローン(もとは同じ1本の樹)であることから、ほぼ同時期に寿命を迎えるのではないかともいわれている。大正初年(1912年)、東京市はアメリカ合衆国にソメイヨシノを中心とするサクラの苗3千本を寄贈したのはよく知られるところ。これらの樹は今もポトマック河畔で見ることができる。東京都の都の花である。 (一部、柏書房/花と樹の大事典による)