Anacardium アナカルディウム(カシューナットノキ)属
熱帯アメリカに約15種が分布。属名はラテン語で「心臓に似た」の意で、果実の形状にちなむ。
- カシューナットノキ(マガタマノキ) Anacardium occidentale
- 英名:Cashew, Cashew Nut 現地名:Maranon(ニカラグア、コスタリカ、キューバ)
- 熱帯アメリカ原産の常緑果樹。樹高約10m。ポルトガル人が自国に持ち帰り広まる。現在はインドが主産地。カシューナッツとして市販されているものは、果実の果皮を取り除いた種子を炒ったもの。脂肪やタンパク質に富み、ナッツとしてだけでなく、中華料理などの材料にも使われる。また、花托(かたく)部分は、切手にも描かれているように肥大して赤く熟す。リンゴのような芳香があり、これをカシューアップル Cashew Apple と称し、生で食べたり、ジャムにしたりする。
Bouea プラムマンゴー属
常緑の高木。東南アジアからマレーシア地域に数種が分布する。
- アカタネノキ Bouea macrophylla
- 一般名:Gandaria 高さ10~20mになる小高木。果実は黄または赤色に熟し、生食または調理して利用される。若芽も野菜として使われる。材は重硬で細工用に。
Mangifera マンゴー属
インド、セイロン島から東南アジア、ソロモン諸島まで約40種が分布。野生マンゴー属植物には果実が食べられるものもあるが、酸味が強く、漆かぶれを起こすものが多い。
- マンゴー Mangifera indica
- 英名:Mango インドネシア・マレー名:Manga
- ときに高さ40mを超える大木になる常緑高木。インド北部からミャンマーにかけての地域が原産地と推定されるが、現在では世界中で栽培される。4000年以上も前から栽培されていたと考えられ、1000を超す多くの栽培品種がある。マンゴスチン、チェリモヤとともに世界三大美果のひとつ。またインドボダイジュ Ficus religiosa、サラノキ Shorea robusta、ムユウジュ Saraca asoca、エンジュ Sophora japonica とともに「仏教五木」として知られる。
- 花序は数千個の小花からなる複総状花序。結実が少ないことから、宗教上の悟りの困難さを示唆する木とされる。果実は曲玉(まがたま)状、球形に近いもの、細長いものなどさまざまな形のものがある。また松脂のような独特の香りをもつ。熟したものを生食するほか、未熟なものをピクルスなどの料理に用いる。また若い葉や花序も野菜的に利用されることがある。
- こんもりとした樹形は熱帯の公園樹や街路樹としても好まれる。また、ウルシ科植物のため、人によってはかぶれることもある。
- なお、平凡社発行の世界大百科事典、世界有用植物事典などでは「熱帯果実の王女と称される」とあります。ちなみに「熱帯果実の女王」と一般的によばれるのはマンゴスチン Garcinia mangostana (オトギリソウ科 ガルキニア属)の方。
- 【管理】種子からの繁殖が可能。種子は寿命が短いので取り蒔きする。硬い外種皮を取り除いた方がよく発芽する。発芽には20℃以上の温度が必要。鉢植えの方が早く結実する。夜間の最低温度は10℃で管理する。
■参考写真:マンゴー花序(京都府立植物園 2006年5月1日)
Pistacia ピスタキア(カイノキ)属
カナリア諸島、ユーラシア大陸南部、北アメリカに約20種が分布。葉は通常羽状複葉で互生する。花弁がなく、風媒花であることが特徴。おつまみや菓子に利用されるピスタチオもこの仲間。
- マスティクス Pistacia lentiscus
- 英名:Lentisco, Mastic Tree 地中海沿岸、アフガニスタン、パキスタン原産。高さ4~5mの常緑小高木。樹脂を香料にする。
- ピスタチオ(ピスタシオ) Pistacia vera
- 英名:Pistachio 高さ10mに達する落葉高木。中央アジアから西アジア原産。ヨーロッパ南部や米国の温暖な地域で広く栽培される。花は雌雄異株で、葉が展開する前に開花する。葉は産出複葉または単葉。花は風媒花。果実の長さ約2.5cm。種子をナッツとして利用する。
Rhus ウルシ属
おもに落葉の低木~高木。世界の温帯から亜熱帯まで約200種が広く分布。多くは樹液に触れるとかぶれる。
- ルス・ランケア Rhus lancea
- 英名:Karee アフリカーンス名:Karee or Rooikaree 高さ7~8m。南アフリカ原産の常緑高木。花は黄緑色で小さい。
Sclerocarya スクレロカリア属
- スクレロカリア・ビレア(マルーラ) Sclerocarya birrea
- 英名:Marula, Elephant Tree ズールー名:Umganu
- アフリカに広く分布する高さ約10~15mの落葉高木。雌雄異株。スワジランド切手の左下に描かれている花のうち、穂状のものが雄花、その下に描かれているのが雌花。果実は枝についているときは青くて、地面に落下したあと黄色く熟すらしいのだが、切手には黄色くなった果実が枝についた状態で描かれている(どちらが正しいのだろう)。またこの果実は野生動物も好んで食べるらしい。種子に含まれる油脂(Marula Oil)は化粧品などに利用されているようである。また樹皮はマラリアや虫刺されの治療などに使われるという。また、妊婦に雄株の樹皮を処方すると男の子が生まれ、雌株の樹皮を処方すると女の子が生まれるという俗信もある。
- 果実からはワインやリキュールもつくられている(「アマルーラ」など)。Argema mimosae (アフリカに棲息する蛾の一種)の食草。属名は「堅いナッツ」の意、また種小名はセネガルでのこの植物の呼び名に由来するという。
Spondias タマゴノキ(アムラノキ)属
約10種がインドからマレーシア地域と熱帯アメリカに隔離的に分布。うち数種が果樹として栽培されている。葉は羽状複葉(うじょうふくよう)で互生(ごせい)。木材としても利用される。属名の
Spondias はギリシャ語で「スモモ」の意。果実が似ていることによる。なお日本語属名の「タマゴノキ」はこの属の1種タマゴノキ S. dulcis の種名(和名)でもあるが、オトギリソウ科の植物にも同名の種があり、まぎらわしい。
- タマゴノキ(タヒチモンビン) Spondias dulcis
- ポリネシア原産の常緑高木。高さ12m以上になる。世界の熱帯で栽培され、いくつかの品種があるが果樹としての評価は高くない。果実の長さ5~10cm。果実は熟すと黄色になり、生食のほか、ジャム、ジュース、果実酒、ソースなどに利用される。また、未熟果や新芽を野菜としてスープやカレーなどの料理に利用することもある。種小名 dulcis はラテン語で「甘い」。
- モンビン(モンビンノキ) Spondias mombin
- 英名:Red Mombin, Yellow Mombin, Hug plum, Hog plum
- 熱帯アメリカ原産。高さ20m以上になる高木。ブラジルなど世界の熱帯各地で栽培されている。果実は長さ2.5cm~5cmで、品種により卵形、球形、楕円形、洋ナシ型と多様。果皮は濃い赤~黄色。酸味が強く、ジャムやゼリーの原料となり、生食もされる。未熟果は塩漬けにも利用される。モンビン mombin の名はアメリカ原住民の呼び名に由来。
- 漢方では果実を阿麻勒(あまろく)と呼び、止血や血行をよくする薬として使われた。