Lilium ユリ属
約100種が北半球の温帯を中心に、亜熱帯から亜寒帯にまで分布する。鱗茎を有する多年草。属名の
Lilium はマドンナ・リリーをさすラテン古名に由来し、ケルト語で「白い li
」と「花 lium 」を意味する。
- ヤマユリ Lilium auratum
- 別名:ホウライジユリ、エイザンユリ、ヨシノユリ、リョウリユリ(料理百合)、ボンノハナ(岐阜)
- 一般名(英):gold lily(花の黄色い条線から)、queen of lily
- 世界のユリの中でもっとも豪華で、英名にもあるとおり、ユリの女王といえる種。日本特産種で本州近畿以北の山地に生える。茎は高さ1~1.5m。夏、茎の先に強い芳香のある直径10~20cmの花を開く。鱗茎を食用とする(百合根)。カサブランカをはじめとするオリエンタル・ハイブリッドの重要な交配親のひとつ。神奈川県の県花。
- リリウム・ブルビフェルム Lilium bulbiferum
- ヨーロッパ中央部の固有種。アルプス・チロル地方に多い。エゾスカシユリ L. maculatum subsp. dauricum に非常によく似ている。葉腋(ようえき)に珠芽(しゅが)をつけるものもある。
- リリウム・カナデンセ Lilium canadense
- カナダのケベック州から米国ウェストヴァージニア州までの広い地域に分布。花色は黄橙色から黄色。花形は鐘状でうつむいて咲く。プセウドリリウム節。種小名は「カナダ産の」の意。
- マドンナ・リリー(ニワシロユリ) Lilium candidum
- 英名:Madonna Lily, Annunciation Lily, Lent Lily, White Garden Lily
- 地中海沿岸から西アジア地域に分布。花は純白で横向きに咲き、花被片の先端は強く反り返る。ヨーロッパではもっとも古くから観賞用にされていたユリ。また歩兵の魚の目の治療に使われたため、ローマ軍の移動とともにヨーロッパ全土に広まったという。19世紀に日本のテッポウユリが導入されるまで、キリスト教の聖花として使われた。
- チョウセンクルマユリ Lilium distichum
- 中国名:
- 中国東北部から朝鮮半島にかけて分布。クルマユリに似る。草丈約1m。花は下向きまたは横向きに開花し、直径は約7.5cmでクルマユリよりやや大きい。鱗茎は広卵形。
- リリウム・ヘルドレイチイ Lilium heldreichii
- リリウム・ランコンゲンセ Lilium lankongense
- 中国名:匍茎百合
- 雲南省北西部からチベット南東部、標高1800~3200mの草原に分布。高さ50cm~150cm。
- テッポウユリ Lilium longiflorum
- 別名:タメトモユリ=為朝百合、リュウキュウユリ=琉球百合、イネラ(東京・八丈島など)
- 一般名(英):White Trumpet Lily, Easter Lily
- 奄美、沖縄諸島などの海岸に自生。高さ50~100cm。初夏、芳香のある純白花を横向きにつける。花は長さ約15cmの漏斗状。花被は6片。和名は花の形が昔の鉄砲(ラッパ銃?)に似ることによる。欧米諸国では19世紀以降、それまでのマドンナ・リリーにとって代わり、復活祭やクリスマスに欠かせない花となった。種小名は「長い花」の意。花言葉は乙女の純潔。
- リリウム・ロフォフォルム Lilium lophophorum
- 中国名:尖被百合
- 中国南西部からチベットにかけて分布し、高山の草原に生育する。高さ約5cm~15cm。花期6~7月。花の直径約5cm弱。開花後も花被片の先端がくっついたままになっている。
- マルタゴン・リリー Lilium martagon
- ヨーロッパからシベリアにかけて広く分布。高さ1m以上。葉は倒披針形(とうひしんけい)で輪生する。直径5~6cmの濃桃紫色または淡桃紫色の花を下向きにつける。変異が多い。
- リリウム・フィラデルフィクム・アンディヌム Lilium philadelphicum var. andinum
- 一般名(英):The Western Red Lilly, Prairie Lily
- リリウム・タリエンセ Lilium taliense
- 中国名:大理百合
- チベットから中国南西部に分布。高さ70cm~150cm。強い芳香がある。花弁の小豆色の斑点が特徴。
Narcissus スイセン属 (Narcissus, Daffodil)
一般的な分類法ではスイセン属はヒガンバナ科に入るが、クロンキスト分類体系ではユリ科となる。ヨーロッパ西部と南部、アフリカ北部、地中海地域に50~60種が分布。属名のナルキッススは、ギリシャ語で「麻痺させる」という意味の「ナルケ」に由来するという。また、ギリシャ神話によると、美少年ナルキッソスは多くの娘に言い寄られたが、ことごとく拒絶した。そこで復讐の女神ネメシスがナルキッソスを、水に映った自分の姿に恋するよう仕向け、ついに彼は自分の姿に恋いこがれて水死してしまったという。そのあとに咲いた一輪の花がスイセンで、花をやや下に傾けている姿は、水面をのぞきこむナルキッソスの面影を伝えているという。西洋文学に登場する花の中でもっとも古い歴史を持ったもののひとつ。
- クチベニズイセン Narcissus poeticus
- 一般名(英):Poet's Narcissus
- 花被片は純白。福花冠は淡黄色で縁が赤い。ピレネー山脈からギリシャにかけての山間の谷に生育。甘い香りがする。ギリシャ神話のナルキッソスの物語に登場するスイセンはこの花だという。花言葉は「自己愛」。
- ラッパズイセン Narcissus pseudonarcissus
- 一般名(英):Daffodil, Common Daffodil, Lent Lily, English Wind Daffodil, Trumpet Daffodil
- 花被片はクリーム色、白、淡黄色。福花冠は濃い黄色。縁は少し広がり、やや不規則な切れ込みがある。西ヨーロッパからイギリスに分布。ラッパズイセン系の多くの園芸品種の原種であり、多くのヨーロッパ人は、このラッパズイセンを典型的な野生のスイセンであると考えている。
- フサザキスイセン(ナルキッスス・タゼッタ) Narcissus tazetta
- 一般名(英):Polyanthus Narcissus
- 地中海沿岸地域に広く分布する。副花冠の長さは、花被片の1/3以下。日本に野生化しているニホンズイセン N. tazetta var. chinensis はフサザキスイセンの1変種。
- ニホンズイセン(スイセン) Narcissus. tazetta var. chinensis
- 別名:セッチュウカ(雪中花)
- フサザキスイセン N. tazetta の1変種。花期は12~4月。日本各地の海岸沿いに野生化して群落をつくっている。中国から渡来したといわれる。鱗茎(球根)は有毒であるが、中国では花や鱗茎を薬用にする。生の鱗茎をすりおろしたものをガーゼに包み、肩こりなどの患部に貼ると消炎作用があるという。
Pancratium パンクラチウム属
ヒメノカリス属とよく似ている、というかヒメノカリスそのもののように見えますが、こちらでは一応別属として扱いました。しかし、パンクラチウム属をヒメノカリス属の異名とする場合もあるようで、詳細はよくわかりません。
- パンクラチウム・アレニコルム Pancratium arenicolum
Paradisea パラディセア属
- パラディセア・リリアストゥルム Paradisea liliastrum
- イベリア半島、スイス、オーストリア、イタリアなどの山地の草原や岩場に見られる球根植物。高さ20~50cm。花に芳香がある。
Scadoxus スカドクスス属
熱帯アフリカに数種が分布。ハエマントゥス属 Haemanthus に近縁。
- スカドクスス・プニケウス Scadoxus puniceus
- 一般名(英):Paintbrush lily, Snake lily
- 南アフリカからエチオピアにかけて自生。高さ20~60cmの花茎の先端に、直径3~10cmの円錐形の花序をつける。地下に直径最大約10cmの、根茎と鱗茎の中間的な貯蔵器官をもつ。また果実は直径約1cmの液果で、赤く熟し鳥などによって食べられる。
Scilla ツルボ属
球根(鱗茎)植物。ヨーロッパ、アフリカ、アジアに約100種が分布。
- スキラ・ノンスクリプタ Scilla non-scripta Syn. Hyachinthoides non-scripta
- 一般名(英):Bluebell
- ツルボ属ではふつう花の苞葉は1枚、鱗茎は多くの鱗片葉からなるが、この種では苞葉は2枚あり、鱗茎は1枚の鱗片からなる。このためこの植物をツルボ属ではなく、ヒアキントイデス属 Hyachinthoides とする見解もある。
Trillium エンレイソウ属
東アジアと北アメリカに46種が知られる。属名は「延齢草」の意であるが、その由来は明らかではないという。いくつかの種では根茎を胃腸薬として用い、また果実は甘く食べられる。
- ヨウシュエンレイソウ Trillium grandiflorum
- 一般名(英):Large Flowered Wake-Robin, Large Flowered Trillium, Big White Trillium, Snow Trillium
- 北米東部に分布。五大湖周辺にはしばしば大群落が見られる。花は長さ30~85mm、幅9~47mmと大型で、白から桃色。ネイティブ・アメリカンは根茎を薬に用いた。若芽が食用にされたこともある。
Tulbaghia トゥルバギア属
鱗茎をもつ多年草。約20種が熱帯アフリカに分布。
- トゥルバギア・ウィオラケア Tulbaghia violacea
Tulipa チューリップ属
西ヨーロッパから中央アジアの乾燥した半砂漠や草原地帯に60~100種が分布。属名はペルシア古語「頭巾 tulipan」から。
- トゥリパ・ビベルステイニアナ Tulipa bibersteiniana
- トゥリパ・クルシアナ Tulipa clusiana
- チューリップ Tulipa gesneriana
- 一般名(英):Common Garden Tulip
- 別名:ウッコンソウ
- 春の花壇を代表する球根植物。非常に多くの園芸品種がある。小アジア原産。種小名は、この花を最初に記録した16世紀の植物学者ゲスナーにちなむ。日本には文久年間(1861-64)にヨーロッパを経て伝わったとされる。オランダで栽培が盛んで、オランダの国花となっている。第二次世界大戦中、食糧不足のオランダでは、チューリップの球根を食べて飢えをしのいだという。日本では富山・新潟の両県で本格的に栽培されていて、両県の県花となっている。
- 【花言葉】「博愛・思いやり」、赤花は「恋の告白」、黄花は「希望のない恋」(英)、「正直・丁重」(仏)
- トゥリパ・グレイギー Tulipa greigii
- 中央アジアに分布。カザフスタンは野生チューリップの宝庫で、トゥリパ・グレイギーなどが大群落をつくっている場所もあるようである。
Urginea ウルギネア属
鱗茎を有する多年草。地中海、アフリカ、西アジア、インドに約100種が分布。
- ウルギネア・マリティマ(カイソウ=海葱) Urginea maritima
- 一般名(英):Sea Onion, Squill
- 地中海地域に分布。重さ2kgほどの巨大な球根を有する。花茎は高さ1~1.5m。全草に毒をもち、地中海地域では古代から殺鼠剤として使われた。
Worsleya ウォルスレヤ属
従来の分類体系ではヒガンバナ科に属するが、クロンキスト分類体系ではユリ科として扱う。
- ウォルスレヤ・ライネリ Worsleya rayneri
- 一般名(英):Blue Amaryllis, Empress of Brasil
Zephyranthes ゼフィランテス(タマスダレ)属
米国南東部、西インド諸島、中米、南米に35~40種が分布。多年草。属名は「西風」と「花」に由来。日本でも花壇の縁取りなどによく植えられるタマスダレ
Z. candida はかなり古い時代にヨーロッパからインド経由で渡来したとみられる。英名:Atamasco Lily, Rain Lily, Fairy Lily(妖精のユリ), Zephyr Lily(西風のユリ)
- ゼフィランテス・ロセア Zephyranthes rosea
- 一般名(英):Pink Rain Lily, Cuban zephyr Lily
- キューバ原産。